ともかく大学の新入生時、御手洗はボストンの街中に下宿して、アメリカ有数の有名大学に通っていた。まだ真の悲しみも怒りも知らない無垢な頃さ、と御手洗は謎のような言葉を私に吐いた。
≪ボストン幽霊絵画事件≫より
いつでもどこでも着ているものを全て脱ぎ散らかして行為に及ぶ官能小説もそりゃあ確かにエロティックだとは思う。
……でもね。
何気ない日常で。凄く穏やかな空間の中で。
“真の悲しみと怒り”を教えてくれた本人を目の前に。
「まだ真の悲しみも怒りも知らない無垢な頃さ」
「…………?」
そんな前置きをしつつ昔話を始める御手洗。
私この一文から状況を想像して一瞬背筋がゾクっとしました。
だってこれって何だか物凄~く……厭らしい光景だと思いません?
しかもその後に続くのが“謎のような言葉を私に吐いた”。
そう――石岡君は知らないんですよ。自分のことを言われているだなんてことは、全く。
だからこそ御手洗はこんなことを彼に向かって言ったんです。
これ、相手にはそうと気付かせずに告白したようなもんじゃないですか?
って言うか
私が一番突っ込みたいのはそれもこれも全部分かってて書いている荘司先生だ。
しかもこれ≪さらば遠い輝き≫の前に収録してあるんですよ。“
わざと”。
この時の御手洗さんの科白を疑問に思った方の為にこの後答えが載せてある。そういう構成になっているんです。
まだ真の悲しみも怒りも知らない無垢な頃さ、と御手洗は謎のような言葉を私に吐いた。
≪ボストン幽霊絵画事件≫より
↓[次の短篇にて]
「とにかく私はキヨシに言った。私が言っている人を好きになるとは、そういうレヴェルの話だ。他人の痛みを自分の痛みに感じて、呼吸さえ苦しくなり、その悲しみと苦痛とで相手と自分との位置を確認し合うような、そういう種類の出来事だと。
そうしたら、キヨシは考え込んだ。思うに、たぶん多少センチになったのだ。それまでの軽いおしゃべりが消えて、長い沈黙のあと、一度だけあると言った」
≪さらば遠い輝き≫より
≪さらば遠い輝き≫の語り手をハインリッヒという“第三者”にしたことはもう流石だと認めざるを得ません。
って言うか私≪ボストン幽霊絵画事件≫でこの科白を言った瞬間の御手洗さんの頭の中が覗きたいんですけどね。切実に。
いやもう……あはははは。何だこれ。
こんな厭らしいミステリー読んだことないよ(笑)。
チョビ様
ありがとうありがとうありがとう!!
web拍手のグラフがちょこっとでも伸びていると一日の疲れも癒されます。一言でもコメント入れてくれると尚嬉しい
ここでお礼が言えますからね~。
あの蝶、ちゃんと動きましたか? 無知だから設置するのに二~三日かかったんだよ~(笑)。でも綺麗だからどうしてもどこかに使いたくて。
実はweb拍手を設置したのはあの画像が使いたかったからです。
そのせいで≪馬車道~≫ver.のお礼画面を十種類も創らなくてはならない羽目になったのは大変だったけど……しかも何だかあっちの方がメインみたいになっちゃったし(笑)。まぁいいや、見た人が楽しんでくれたみたいだから。
今度は御手洗さん達にも会いに行ってみてね。
[3回]
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