「でも先生、自分がこの場の場違いだって、自分はこんなところにいるべき人間じゃないって、そんなふうに思って落ち込んだこと……、劣等感の塊になっちゃって、辛くって、苦しくって、自分はズルしてここまで来て、そんな力なんて全然ないのにって、そんなに思うこと……先生、あります……?」
(暫く間を置いてから)
「ないと思う?」
≪犬坊里美の冒険≫より
これ、里美ちゃんと石岡君の電話での会話なんですが、初めてこの科白を見た時に私は自分の目を疑いました。
和己……
――――
お前はどこのお耽美キャラだ――――!!
…いやホント、この人がこんな口の利き方をすることって滅多にないんですよ。って言うかもしかしたら初めてなんじゃないかな。しかも、里美ちゃん相手に。
しかしこのシリーズって本当に面白いですよね。誰の目線で書くかによってキャラクターのイメージまでガラリと変わってしまうことがある。多分この本だけを読んだら石岡君が普段里美ちゃんの前でおどおどしているところや御手洗の前で大声で怒鳴ったりしているところなんて想像出来ないんじゃないかな。――いやまぁそれだって石岡君の目線で書かれている物語なわけだから実際(客観的に見て)どうなのか疑わしいところもあるんだけれど。
御手洗さんだってそう。レオナやハインリッヒから見た彼はエキセントリックな天才教授に見えるけど石岡君から見た彼は私生活のだらしない変人に見えもするし、御手洗から見た石岡君なんてもう……どこの儚い美青年なんだよ彼は、というような印象に書かれていて「
アンタはどんだけ和己に幻想抱いてんだ。マリンカリンかかってんじゃねーのか?」と奴を問い詰めたくなる程だった。
恐るべし御石。
――しかし石岡君に関わって人生を変えられた人間がこれだけ多くいることから考えてもやはり彼は相当に魅力的な男性であるらしい。
自覚は全くないみたいなんだけどねぇ(苦笑)。
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